歳三往きてまた

歳三往きてまた歳三往きてまた
秋山 香乃

文芸社 2002-03
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さぁ。
その筋ではご存じの方も多いかと思いますが。(どの筋ですか)
ご紹介します「歳三往きてまた」。

鳥羽伏見の戦いから土方さんが死ぬまでを描いた作品。
女性特有のやわらかい文体で、淡々と紡がれる歴史小説。
土方さんを中心に、戊辰戦争を丹念に描写してます。

まぁこの土方さんなんですけどね。
京都では鬼の副長とか言われてたみたいですけどね。
連戦に継ぐ連戦で、すっかり丸くなってしまわれたようですよ。

どう考えてもそれは母性です。

いや、実際「赤子が母親を慕うように」慕われてた時期のお話ですから間違いじゃないんですけど。

んー。イメージとしてはですね。
ラファエロの「聖母子と幼児聖ヨハネ」って作品ありますよね。

アレ。

いやいや酔ってませんよ。素面です。


真面目に話しますと、土方さんの人生で絶頂期ってやっぱり京都だったと思うんですよね。
鳥羽伏見以降は奈落へ転げ落ちるように北へ北へ追いつめられていく。
古くからの友人はばたばた死んでいくし、様々な都合で離ればなれにもなる。
函館にたどり着いたときなんて、京都からの仲間なんか数人ですしね。
そういう喪失感たっぷりなはずなのに、彼は闘うことを止めなかった。
その強さはいったい何だったんだろう。
これが私がこの時期の土方さんに惹かれる大きな理由なんですよ。

それを、一つの解釈として描いてくれてる作品です。

上にも書いたように、どうにも人物描写がね・・・。
「純文学歴史小説」とは言いづらいといいますか・・・。
「艶やかで豊かな黒髪に透き通る白い肌」とかね。
一体どこのお嬢さんですかァァァァァァ!!!
と叫びたくなるんですよ。
殺陣(といっても銃撃戦が主)の描写はなかなか迫力があって楽しめますし、気にしなきゃ気にならない程度だとは思うんですが。
史実も丹念に追ってる印象で、歴史物として普通に面白いです。

戊申戦争お好きな方はぜひ。


戊辰戦争ってゆーかむしろ、儚げ~な色白~な北国の雪と共に溶けてしまいそ~な土方歳三がお好きな方には、バイブルになること請け合いです。



以下、腐った方向から見た感想。
本気で腐ってますから!
ドン引きされても知りませんからマジで!



ということで。
まー、ぶっちゃけこの本を一言で表すと、

これなんて土方総受け?

あーすっきりした。
この一言が言いたかった。

いや、この土方さんの受け受けしさときたら、そんじょそこらの同人誌なんか目じゃないですよ。
それもさ、「土方受け」とか書いてくれてればそれなりの心づもりで読むけどさ、普通の歴史小説です~みたいな顔して立派なカバーつけられて。
こっちも清く美しい心で読み始めるじゃん!
そしたらコレだもの!
何コレどっきり!?
そんなに私を驚かせて楽しいですかコノヤロウ。


いやいや落ち着け。
でもね、TPOと言いますか、真面目なご本読んでるときにまで不埒な妄想繰り広げるようなことはしないです。
特に新選組ってなんか神聖なかんじするし。
私にとって特別だし。
そんなね、腐った眼差しで読むなんて、「そういう本」でなければしませんよ。
いくら「惹かれる」だの「魅せられる」だの「惚れる」だの言葉をつかわれても、そこはTPOできちんと文意をくみ取ります。

だがしかしこれはそんなレベルじゃなかったよ。


少し落ち着いて検証してみよう。

鳥羽伏見に敗れ、甲府も取れず、とうとう近藤さんが捕まってしまいました。
土方さんは、近藤さんの助命嘆願をしに、勝海舟に謁見します。
ふむふむそういう話あるね。

土方は畳に額を擦り付けた。屈辱に震えながらも自尊心を捨てた土方の姿は、多少、勝の心を捉えた。(中略)
「頼みます。できることは何でもする。力を貸していただきたい」
土方は懇願する。
(中略)
「それほどあの男が大事なら、手を貸してやらなくもないってもんだ」
土方は息をのんだ。
「代わりにお前さんの大事なものを貰おうかい」
「・・・・・・それで、助けてもらえるのなら」
土方は今から支払う代償の中身を確認する前に返答した。それがどんな要求であったとしても近藤と天秤にかけることは自身で許せなかったからだ。
「ああ、いい覚悟だ」
やっと勝の目が笑った。勝は土方の耳に重大なことを吹き込み始めた。土方の顔色はサッと青ざめ、体は小刻みに震え始める。が、彼は勝の提示した全ての条件を受け入れた。
「ほうっ」
とため息をつき、
「そんなに・・・・・」
あの男がいいのかと、勝は先刻と同じつぶやきを唸るように漏らす。



目を覚まして勝先生!!!!

いやいやまてまて落ち着こうZE☆(動揺)
勝海舟が鬼畜攻めなんてそんなお話じゃなかったはず。違ったはず。
心を落ち着けて次。
土方さんは勝の嘆願書を持って仲間の所へ戻り、板橋へ送るよう指示しました。


「任務終了だ。やれることは皆やった」(中略)
(やれることは・・・・)
いや、未だ勝との約束がある。それは他の隊士達には無縁のことだった。



やっぱりィィィィ!!!土方さん逃げて!今すぐ逃げて!
いやいや、いやいや、いやいやいやいやおおおおちついて。

他の隊士達には先に会津に向かえと言う土方さん。
当然のように拒否する隊士達。


「何のために会津に行かずにあなたを追ってきたか、俺は動きませんよ」(中略)
(動くさ)
と土方は思った。
(なぜ俺が残るのか、本当のことを知れば嫌でも動く)(中略)
勝との約束が重く彼の胸にのしかかっている。





・・・・・・・本当にそういう話だったんだ。
甘かったよ私認識が甘かった。
もう少し大人のお姉さんな心構えで読むべきだった。
うわぁぁぁこんなところで土方さん( 以 下 略 )

と、本気でおろおろしながら読みました。
深読みしすぎとは言わせない。
だって、本当に何ページにも渡って「大事なもの」が何なのか明かされないんですもん。
結局は、断髪アンド改名、つまり「新選組の看板降ろせ」ってことでした。(一応ネタバレ伏せ)
ここまで引っ張っておいて・・・ぐったり。

しかしこういうシチュエーション、少女マンガでよくありますよね。
借金を残して死んだ親。借金取りがやってきて借金のカタに形見を持って行こうとする。
「待ってください!それだけはどうか!父の形見なんです。他の物ならなんでも差し上げます。」
「・・・何でも?」
「ええ何でも!私にできることなら何でもします!どうか!」
「そうかい。ならその体dry」
「そ、そんなつもりじゃ・・・」

とか。(とかじゃねーよ!)
いやしかしこのシチュって本当にこれなんてエロg



他の絡みも知りたいですか。そうですか。それでは島田さんなんてどうですか。
近藤斬首を知った翌日の土方さんを見て。

(この人は・・・・)
仕種も声音も、悲しみ一つ滲ませず、淡々と平生通り振る舞う土方がいじらしい。
島田は初めて上の目線からこの男を見下ろした。
何かが島田の中で弾けた。もとよりどこまでも従うつもりでいた。今までも確かに惚れていた。が、この日、島田は土方に一層離れがたいものを感じたのだった。



赤い実はじけた。

島田さん!そんな中学校の教科書に載ってるような甘酸っぱい気持ちってそれどうよ!!!


え、もうちょっとっぽい方がいいですか。そうですか。それでは。

「島田君は優しいな」
最近はいつも洋装の軍服姿だったのが、この日は襦袢の上に着流し一枚を羽織り、伸びた髪もばさらのまま片膝を立てた行儀の悪い格好が妙に色気を誘う土方の姿に、隊士がみなあてられてもぞもぞしている。そんな折、肘下の意外に白い腕をあらわにしつつ、髪をかき上げチラリと流し目でそんなことを言うものだから、みな何か腹立たしい気持ちを味わいながら俯いて酒を口にする。




襦袢、立て膝、白い腕、髪をかき上げる仕草、流し目、色気・・・・・・。

誘い受けキタ━━━━━━(*´Д`)━━━━━━ !!!

まずいだろ。これはさすがにちょっと頂けないだろ。
そんな受けキーワード満載な歴史小説ってこれいいんですかPTA!


え、もうちょっとシリアス目がいい、そうですか。では。

「あんたより先にくたばらないさ。トシさん、ここに来な」
土方は伊庭の横に座った。
「あんた、寂しがり屋だろう。みんな知りゃしないんだ。だからどいつもこいつも先に逝っちまう。俺は知っているからね。ちゃんと後に逝ってやるよ」
「何・・・・言ってやがる死に損ないが」
「トシさん、冥土の土産によ、あんたの泣き顔、見せてくれよ」
「くそったれ」
わずかに沈黙の後、
「ありがとうよ」
伊庭はひどく幼い顔で微笑した。



ツンデレキタ━━━━━━(*´Д`)━━━━━━ !!!

よかったねー土方さん良かったですねー解ってくれる人いて良かったですねぇぇぇぇぇ。


ということで土方さんは、誘い受けでツンデレで、それら全て無自覚な魔性の人だそうです。

はい?

いやいや、そういうふうに受け取ってみたらどうですかという提案にすぎな(死んでいいよ)


あ、ちょっと(いやかなり)誇張して書きましたし、すんごいピンポイントでご紹介したので、ここだけ読んだらえらい本な気がしてきますが、気にしなければ気にならない程度ですからほんと。たぶん。

勝さんのくだりだけは本気で動揺しましたが、あとはね。
ほほえましいくらいですよ。

まぁ、アレです。
ちょっとびっくりしちゃったかな~あはは、という気分をお裾分けしたかったということで。
この本去年読んだんですけどね。
この間読み返して同じ所でひっかかりましたからね。

色あせない本だなぁ。(言葉の意味が違うと思います)



最後に、超個人的趣味からの、そういう意味での好きなくだりをご紹介します。

宮古湾の戦いで敵船に突撃した相馬と野村。
相馬が足をケガし、もはやこれまでと野村に後をたくす場面。

「土方先生を頼む。俺の代わりに最後まで仕えてくれ」
「この、うすら馬鹿!こんなときに足を斬られるなんざ、とろいんだよ」
野村は相馬の斬られた足の傷口をおもいきり掴んだ。相馬から悲鳴が漏れる。
「痛いじゃないか!何をする」
相馬の血でまみれた自分の指を野村はくわえ、
「俺のこと、忘れるなよ。いいな」
にやりと笑うと相馬の足を抱え上げる。


ああ、この血まみれダークシリアスな感じすごい好き。

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